慶應義塾大学 通信教育課程(以下、「慶應通信」)卒業を目指し、その学びを書きとめる当ブログ、今回の記事は不合格だった出願書類の考察です。
私は2021年4月入学(第75期生)を目指して慶應義塾大学 通信教育課程 文学部 第2類(史学)に出願しました。書類選考の結果は「不合格」。今回は私が不合格になった理由を考察し、書きとめます。
慶應通信に合格するためには以下の3つの論文をクリアする必要があります。本記事では「2)書籍を一冊選んで概要をまとめて自分の視点から論評せよ」を取り上げます。
【慶應義塾大学 通信教育課程 入学出願時に作成する3つの論文】
- 1)志望した学部・類で何を学ぼうとしているのか、①過去の学習体験、②将来の展望、のいずれにも触れながら、具体的に述べなさい。(720字以内)
- 【!!!本記事!!!】2)自分の学びたい学問領域に関わる書籍を一冊選び、概要を簡単にまとめた上で、自分の視点から詳しく論評しなさい。(720字以内)
- 3)なぜ慶應義塾大学の通信教育課程を選んだのか述べなさい。(150字以内)
以前は不合格論文を掲載していました。しかし、「公正な評価の妨げになる」などの理由から、大学側が選考書類のインターネット公表を禁止していることを知りましたので、現在は公表を控えています。本記事は不合格論文の全文を掲載していた過去記事の改訂版です。
不合格理由の考察概要
不合格時に提出した論文の欠点をまずはまとめます。
- 不合格理由① 書籍の選定理由が雑だった
- 不合格理由② 自分の意見を述べていない
順番に書きとめて参ります。
不合格理由① 書籍の選定理由が雑だった
まずは書籍選定過程をご紹介します。
慶應通信への挑戦を私が思い立ったのは20年10月頃でした。思い立ったその日、入学に必要な情報をネットで収集しました。
その結果、入学試験の代わりとして3つの論文課題が存在することを知りました。そして、3つの論文の中では今回取り上げた書籍の論評が一番簡単そうに思えました。なぜなら私は趣味が書籍を中心としたamazonレビューの投稿だからです。
さて、時間的に余裕があるものの、わざわざこの論文のために本を買う気にならなかったため、自分の本棚から適当な本を探し始めました。
本を買う気にならなかった理由は、(大事な点は本の選択よりも内容のまとめ方と自分の視点でしょ?本はなんでもいいでしょ?)と当時の私が思ったからです。
この時点ですでに道を誤っています。大学での学びは問題意識を持って読書に取り組まなければなりません。安易に手元にある本を読んで感想文を書く、という課題ではないのです。
そんな基本事項も当時の私は理解していませんでした。
それはともかく2020年10月から2021年1月までにこの論文課題を意識して読み直した本は以下の通りです。
- 『日本の歴史【1】~【9】』 岩波ジュニア文庫
- 『英語と日本軍 知られざる外国語教育史』 江利川 春雄著/NHK出版
- 『項羽と劉邦の時代』 藤田 勝久著/講談社
- 『第一次世界大戦 忘れられた戦争』 山上正太郎/講談社学術文庫
- 『江戸日本の転換点 水田の激増は何をもたらしたか』 武井 弘一/NHK出版
この内、『日本の歴史【1】~【9】』は9冊で日本の通史を扱うシリーズものです。21年2月上旬頃に9冊のシリーズ内でどれにしようか迷いました結果、『日本の歴史【6】江戸時代』深谷克己著/岩波ジュニア新書 に決めました。
書籍決定にいたるまでの私の思考回路はおおむね以下の通りです。
特定地域や特定時代に特別な思い入れはないな。大学に入って一生懸命勉強するうち、ふとしたきっかけで特定の興味深いテーマを見つけることができたらいいな。そんな幸運な出会いを待つ間はなるべく通史をフラットに眺める姿勢を持っておこう。
↓
じゃあ入学前に一通り通史について自分なりの理解を言葉にしておいた方がいいな。丁度良い論文課題を慶應通信が与えてくれているから、この論文を書きながら考えを整理しよう。じゃあ日本の歴史【1】~【9】で決まりだな。通史全部について考えてみたいから9冊全部を選択対象の書籍にしよう。
↓
いやいやいや、720字の制限下で9冊全部を論評対象にするのは難しい。だいたいにして課題が「書籍を一冊選び」じゃないか。「シリーズ9冊で1冊」と自分勝手に解釈したらそれだけで不合格になるかもしれない。9冊の内で一番面白かった6巻目の江戸時代だけを対象にしよう。
本を選択した時点では(要は論文の中身、本の選択はなんでもよい)と思っていました。ところが今思いますと入門書を選択して「これから勉強を頑張ります」と言われても選考する側は(本当か?)と感じるはずです。
話変わって私は転職活動に連戦連敗を続けています。私のような「40代中年おやじ&スキルなし&実績なし&万年ヒラ社員」に「頑張ります」とだけ言われて面接官の皆さんは一様に苦笑されます(面接官の皆さん、貴重なお時間を頂きながら本当に申し訳ございません)。
これと同じ失敗を入学試験でもやらかしました。
私が10代後半の未来ある若者であれば意欲一本のごり押しで相手に通じることもあるでしょう。しかし、慶應通信はええ年こいた中年が入門書を読んで「ちょっと歴史に興味があるので学ばせてください」と言われて「はいどうぞ」と受け入れてくれるような学校ではありません。
大事なことなので強調します。
失敗点は入門書を選んだこと、ではなくて、無目的に本を選定したことです。
大学側はこの論文課題で恐らく受験者の興味や問題意識の深さを見ています。何の問題意識も持たず、「言われたから本を読んでみたよ。あとはそっちで学ばせてね。」と言う頭の過去の私そのものである受験者は決して受かりません。
不合格理由② 自分の意見を述べていない
無目的に本を選んだ、と言う点に通じる話です。
「何となく通読してから、はて?、と言う感じで改めて印象に残った点を中心に記述をまとめる」、このやり方では深い考察は得にくいです。その時の気持ちや雰囲気に流されて思考がふわふわと行ったり来たりしがちになるからです。
しかし何より大学で学ぶ者として読書姿勢が受け身すぎます。これは大きな問題です。
問題意識を持たずに読書をすることは学問とは言えない。そこに当時の私は全く気がつきませんでした。そして受け身姿勢そのままに私は文章を書き上げてしまいました。
ざっくりまとめると本課題に対する私の不合格論文は、「いや~、驚きました。そんな事実があったんですねぇ。拍手。」みたいな内容です。情報を鵜呑みにしているだけで、何ら論評を加えていません。つまり、慶應通信の問いである「自分の視点から詳しく論評しなさい」に正面から答えていません。これでは不合格は当然です。
まず問題意識なり目的なりを持って読書に取り組む。その上で自分の興味・関心を惹いた点を掘り下げて考える。そうして得た自分の考えがどういう根拠に基づいているのかを含めて書く。
これくらいをやらなければ論評したことにはなりません。
不合格から半年が経った21年10月、私はリベンジを果たしました。22年4月現在、慶應通信生として学ぶ日々を過ごしています。
合格時、この課題のために選んだ書籍はしっかりと問題意識をもって向き合いました。
卒業までに取得が必要な単位 … 残り84(入学以来半年、いまだ1つもレポート課題をクリアできず(泣))。
何かの参考になれば幸いです。最後まで読んでくださりありがとうございました。
本記事をのぞく、2つの論文の不合格考察はこちらからご覧ください↓
2021年秋に合格した時の考察記事はこちらです↓
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